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ティーンエイジャー危機映画

ネットフリックスで「見えない存在」というブラジルの映画を見た。ざっくりあらすじを書くと、妊娠中絶が禁止のアルゼンチンで、十七歳の女の子が妊娠中絶の方法を探す話。

ほんとにざっくり……。

ヒューマンドラマなんだけど、盛り上がるような起承転結はなく、全編を通して静謐で、淡々と時が流れる。女の子も口数が少なく、家族の問題を抱えて疲れ切っている。

なんとなく、深夜枠のNHKドキュメンタリーを見ている感じ。

会話もなく流れる息遣いの、リアリティが哀しい。

この映画は、女の子の苦悩というよりは、社会への問題提起として作られているように感じた。

2020年にアルゼンチンは人工中絶が合法化されたらしい。

もしわたしが現地人だったら、淡々と流れる映像から色々なものを汲み取れたかも。その場所に生きる人にしか、伝わらない感情ってあるんだろうな。

ティーンエイジャーが辛い目に遭っている映画をよく引き当てる。

ジャケットで選ぶと、精神的に疲弊し過ぎて何も感じなくなっている十代の女の子の主人公率が高い。そして、そういう映画の女優さんの演技力が高くて驚く(かなり身体も張っている)。

演技って、時を超越するのかな。凝縮するのかな。芦田愛菜様に聞いてみたい。

最後に、天野オススメの「ティーンエイジャー危機映画」を紹介します。

アマプラ・Hulu・ネトフリのどれかで観れたはず。

憂鬱な日常にぴったりの、映像のくすみ感も素敵なのでぜひどうぞ。登下校は曇りの日が多いよね。

●「ブルー・マインド」

女の子の体調の悪さがぐっとくる。女優さんの体調の悪い演技が本当に上手くて、こっちまで体調悪くなりそう。

思春期の女子特有の気分の変調がとてもリアルなのと、敵味方の区別が洋服の色使いでさりげなく暗示されているところが好き。

●「プレシャス」

観たのは10年前だけど、未だ鮮明なシーン数々。こんな家庭あるのか、と思うほど悲惨な家庭だが主人公の女の子がタフなので病まずに観れる。

病むと、あたしは輝いているイケイケな女子なのよ! という妄想がフラッシュバック的に脳裏をよぎる。本当に危うくて良い。

●「ヴィオレッタ」

女の子が二次元から出てきたんじゃないかと思うほどかわいい。これは母親が玩具にするわ……というくらいかわいい。実話なのか、これ。

あとシド・ヴィシャスだったのか、彼。

とりあえず観てください。かなり悲惨な目に遭っているのに、女の子がかわいすぎてストーリーが集中して追えないのが難点ではある……。

●「8 Mile」

エミネム……ラップバトル前の体調不良がほんとに辛そう。アグレッシブな青年のエミネムがとにかくカッコイイけれど、この環境に身を置くのはキツ過ぎる。とにかく周りの人がキレるし攻撃的だし銃出すし、今日を生きるのに必死な感じが観ていてしんどくなる。

「ティーンエイジャー危機映画」もっと観たいです。こういう系統の映画ほかにもあったら教えてください。アンニュイな気持ちと戦いながら楽しく観ます。

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エモエモの実

デザイナーをしているんですが、「エモいやつ」をいつも作ろうとしてしまう。ここ一年くらい、マイブームが「エモい」です。

「エモい」って、不思議な言葉ですよね。

定義がふわっとしている割に、「エモい」と「エモくない」の境界がくっきりしているような気がするのですが、どうでしょう?

霧の多い場所に敷いた国境線、みたいな。

(そんな場所が実際にあるのか知らないけれど)。

国境線を越えて「エモい国」に入りたいのに、「エモくない国」から抜けられない感じをずっと受けている。

弊社の業務は個人の裁量がどこまでも広いので(放置とも言う)、好きなものを好き勝手に作れます。

そこで勝手に「エモい」を目指してポスターやら商品POPやらを制作している毎日ですが、なかなかエモーショナルに至らない。

わたしの「エモい」に対する考えがズレているのだろうか……

・グラデーション(青〜紫系)

・ゴシック体をちょっとナナメにする

・人物の陰影を濃くする

・スモーク

・ネオンライト

・自然体の写真

・君のこと、好きでした

・クラブミュージック

・夜

あれ、箇条書きで「エモい」イメージを明確にしようとすればするほど「エモい」からズレている……煙に巻かれているような。

Pinterestに「エモい」ボードを作って、ひたすら「エモい」デザインを収集したりしているのだけど、そしてPinterestの人たちが作った制作物は「エモ〜!」と唸るような出来栄えのものばかりなのだけど、霧をつかむように作ろうとする側から作れなくなっていく。

なんかこう……「エモい」体験をしたほうが良いのだろうか。打ち上げ花火見たり? 夜の海岸、散歩したり? クラブで体を揺すったり?

あれ、エモいってこういうのじゃなかったっけ?

あれ、違うの?

えっ……? えっ……?

そんな感じで、今日も見果てぬ「エモい」を夢見て、「エモい」デザインを作ろうとしています。

「エモい」って、憧れなのかもしれない。

オタクが夢見る、リア充の夏休み、的な?

・憧れ

画像
おまけ:ぼくがかんがえたさいきょうのエモ

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おばあさまたちの世界観

「ギーゥト締めない事」という張り紙がタンスに貼られていました。
タンスの、小さな扉の一つに。
どうやら完璧に戸締まりすると、歪んだ木枠にドアがハマって、開くのに苦労するようでした。
だから、「常に半開きにしておいてください」、という意味を込め、ウチのトミさん(祖母)が「ギーゥト締めない事」と張り紙していたのです。

「ギーゥト」という謎の言語が、「ぎゅっと」を示していると気づいたのは、数年後のことでした。

タンスは脱衣所のそばにあったので、服を着たり脱いだりするときに、何となく目に入るだけ。日常生活に溶け込みすぎていて、文章の深い意味とか考えなかった。

そもそもそのタンスに入っているのは、トミさんの衣類だけだから、他の家族が手を触れる理由はなく、すると、あの張り紙は誰に向けて書いていたのか? 個人的なメモ? それにしては、「この橋渡るべからず」みたいな、威厳のある字の太さだったが……。

ジェネレーションギャップを超えて、50歳くらい年の離れた人の世界観を見るのは、楽しいですね。

思想ではなく、世界観。
考え方、ですらないところがミソです。

(念のため)馬鹿にしているわけではなく、シルバーパスとショッピング・カートを握りしめ、我が道を行くおばあさんたちは、インターネットに溺れているわたしからすると、骨太な独自世界を築き上げているように見えます。

なんだか、古代の偉大な文化を目の当たりにしているような感覚に陥る。

今は亡き大叔母さまの家は、独自の世界観の宝庫でした。
手作りの小物入れや如雨露、仏壇周りの道具(これも手作り)、風呂に入った後必ず浴槽に散った水滴を拭き上げるとか、とにかく大叔母さまの小宇宙が展開されていてとても好きでした。

一人暮らしの大叔母さまは、毎朝窓のシャッターを開ける事で、自分が今日も生きていることを近所に知らせていました。

シャッターが開かなかったら、自分が病気で倒れているから助けに来てほしいという合図にしていたそうで、実際にシャッターが開いていないのを見た近所の人が倒れている大叔母さまを発見して救急車を呼んだという、天晴れな独自ルールは真似ようにも真似できません。

なんだか話がシリアスな方向に向かってしまいましたが、最後にひとつだけ。
最近見かけたおばあさまの、独自文化を紹介しましょう。

それは市民バザーに出店していたときのこと。

わたしが売る美少女フィギュアを手に取ったおばあさまがいました。推定・80歳くらい。
「かわいいお人形さんねぇ。お手洗いに飾りましょ」と某・魔法少女を即断でお買い上げ。

「美少女フィギュア」という概念すら知らないけれど、可愛いお人形だからトイレに飾る……すごい。
オタクにはない考え方に、衝撃を受けました。

おばあさまの世界観の一部を、わたしの美少女フィギュアが形作っている(そしてトイレを可愛くしている)と思うと、今でも胸が熱くなります。

おばあさまってすごいなぁ。

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