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愛あるおごり

五年くらい前に、知り合いの女性から、年上男性にハマっているという話を聞きました。
一応「彼女」のポジションではあるんだけど、デート中の食事代から交通費から煙草代まで全部出しているらしい。さらには、彼のビジネスの支援をしているという。
8:2くらいで、彼女持ちの支払いが多く、彼氏側のビジネスも絡んで、まさに底なし沼へハマる直前の雰囲気でした。
まるで絵に描いたようなヒモ男だな、と思っていたら、彼女にも自覚があるようで「私の彼氏はヒモ体質なんだよね」と明言していました。

こういう関係って、彼氏側からすると「バカな女だ。カモにしてやれ」的な思惑がありそうですが、女性側は分かってやっていることが多いようです。
話を聞いていると、その知り合いもお金を奢ることに対して、ちょっと誇らしげ。
本場のホストに貢いで、シャンパンタワーを立てるには数百万のお金が掛かるから、身近な夜職の人をできる範囲で支援することで、費用を節約しているような感じがする。
あるいは、対価を差し出して母性本能をくすぐってもらっているのかも。
マッサージ師に足ツボマッサージをしてもらうみたいに。

一つ思ったのは、お金を払ってまで支援したい他人がいるのってすごいことだなーということでした。
ホストでもアイドルでもVtuberでもカンボジアの子供たちでも誰でもいいんですが、対人間に大量のお金を出せる人って、情が厚いし懐が深いんなと思います。
(その知り合いも無償で私を助けてくれる、とても優しい女性でした)

わたしは誰かを支援(貢ぐ)したことがあるだろうか……と考えましたが特にありません。
好きなアーティストや芸能人はいるけれど、グッズを買ったりLIVEやSHOWに行くことは全くない。なぜならYouTubeやAmazonで見られるから。
24時間テレビも佳境に差し掛かったマラソンランナーの辛そうな小走りをちょっと見るくらいだし、まして身近な人と常におごる関係になったこともありません。
わたしは貢ぐ女とは違うのよ!と言いたいわけじゃなくて、一個人に対してお金を払い続けるほど心を開け渡したことがないので、文字通り身銭を切れる人をかなり尊敬の気持ちで見てしまいます。
それがどんなに異質なお金の使い方だったとしても、人のためにお金を払える人って、真似できなくてすごい。

先の話に戻ると、後は貢がれている彼氏が雷にでも打たれて「俺、青年海外協力隊に参加するわ」とか言い出したら愛あるお金がまさしく世界平和へと流れるなと思うのだけど(ラブ&ピース)、神様がいるのならこういうところでちょっとした神通力を起こせばコスパ良くイイ感じの世界に変えてゆけると思う。
いかがでしょうか?(誰に言っている)

ちなみにビジネス系の本に「寄付をすると人生の幸福度が上がる」ということが書かれていました。
どこかの大学が行った実験で、渡したお金を全額自分のために使った人と寄付に回した人とでは、圧倒的に寄付をした人の幸福度が高かったらしい。
という理屈でいくと、上記の彼女はめちゃくちゃ幸福のただ中にいるということになる。
なるほど……自虐気味に語っていたけれど、その目は嬉しそうに細まっていたのも納得です。

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失ってみないと分からない

先週、自宅の大掃除をしました。
洋服から家具まで、家中のありとあらゆる不用品を破棄売却。体感的に、所有品の70%は手放せたかと思います。靴下なんか一足残らず捨ててしまいました。現状、タイツ以外履いていくものがありません。

大掃除というより「殲滅戦」ーージェノサイドされた空間は、暴力的な欠落感が漂い、家主でも居心地が悪くなる静けさです。
感覚的なだけならまだしも、片付けを終えて、体調を崩したり、精神的なよるべなさを感じたりしました(ただし3日で治りました)。
ああ、あの洋服はもうないんだ……などという、亡き人を思う切なさみたいなものは全くないです。ただし、何かを傷つけた後の居心地の悪さを感じます。物が消えたからというだけでなく、空間自体をよそよそしく感じます。

思えば、掃除をした四日間はひたすら怒りに燃えて、物を捨てまくっていました。自分で決心して始めたにも関わらず、何かに取り憑かれたように。

私はどちらかというと、見栄えの可愛さ・美しさよりシステマティックなモノが好きで、賑やかさより静けさというか、洗練された家具や照明に魅了されるタイプです。
空間的には「田舎のおばあちゃんの家」や「汚いけど美味い飯屋」より「大きなホテルのラウンジ」「空港のコンコース」「BGMが静かな深夜のバー」など生活感のない場所にいると落ち着きます。
従って、モノを減らし人間味の薄れた現在の自宅はかなり住みやすくなっているはずです。この居心地の悪さは、単に物が減って不便になった(靴下ないし)心細さが原因だと信じたい。

戦争によって瓦礫の廃墟と化した街に一房の緑が芽吹くように、必要に応じたモノを購入していけば、やがて私だけの安心できる空間が創生されてゆくでしょう。まずは靴下が欲しい。

さて、この記事を読んでくださった読者諸氏の中には、破壊の限りを尽くす鬼神として、文字通り現存世界(汚部屋)を一掃したいと願う方もいるでしょう。
個人的な感想はこのくらいにして、今回の大掃除に使用した魔導書を紹介します。
この本には私的空間を破壊しつくす禁断の黒魔法が記述されておりますので、扱いには充分注意し、覚悟を決めた上でご使用なさってください。
これまでに手にした財産すべてを失っても、当方は一切の責任を負いません……。

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ヒトも歩ければヒトに当たる

写真はお友だちからもらったエロい耳かき。

電車の席に座るとき、だいたい不思議そうな人の前を選んで座ります。ぐるっと車内を見回して、目立つ人を見つけてみる。席が空いていなかったら、斜め向かいに立つとか、近距離に拠点を構えて偵察しちゃう(戦争か)。

不思議そうな人というのは、ファッション・センスが不思議な人、挙動が不思議な人、不思議な話を友達としている人……などです。
中でもファッション・センスが不思議な人に遭遇する確率が一番高いです。どんどん柔軟に、自己表現しやすくなっている世の中で、独自の世界を展開している人を見ていると嬉しくなります。独特にしても「明大前駅」と「銀座駅」ではファッションの系統が違うので面白い。山手線で、十代の女の子たちが髪の毛をピンクやブルーにしているのもきれいでかわいいです。

オタクが市民権を得たことも、わたしにとってはびっくりすることでした。何せわたしが高校生のころ、漫画部に入り浸っているのを人に見られただけで、犯罪を犯しているような、あるいは犯罪者予備軍ですよと示しているような気持ちがしていた(相手もそんな目で見ていたような)くらいなので、まさかこんなに気楽な世の中になるとは……と十代の子らがアニメTシャツをごく普通に着こなしているのを見るとびっくりします。オタクではなく、リア充っぽい子が!しかも、彼氏を連れている!
今ではオタクであることが普通というか、「推し」という言葉が日常会話でも使われていてすごいなぁと思います。たった10年ほどで変わるんだな時勢って。

はい、閑話休題。

先日風邪をひいたときに、病院で処方箋をもらいました。自宅近くには3カ所くらい薬局があって、どこで貰おうかなと迷っていたところ、なぜかひとつだけ、気になる店舗がありました。外観はどこにでもある普通の薬局屋なんですが、第六感が「ここにしなさい」と言っている。

いや、第六感とかいうと大袈裟なんですが、電車内で目立つ人(ちょっと問題児風の大人)が乗り込んできたときに「うわー、来るぞ来るぞ隣に座るぞ……ほら座った!」というささやかなアレと似たにおいを嗅ぎつけてしまい、入ってみますと……いた!
全身光沢白ジャージで、靴だけが黄金のピカピカしたNIKE、インナーシャツは虎柄で、首からポーチみたいなのをぶら下げているお爺さん。
すごい大声で薬剤師さんに絡んでいる。

こういう人を発見すると嬉しくなります。
そのお爺さん、ケンカしているわけではなくて、あくまでも本人はごく普通に世間話をしているのですが、明らかに音量と話す場所を間違えています。なんか、金ねぇんだよ薬ってなんでこんなに高ぇんだろうな!とか言っている。
常連さんらしく、薬剤師さんも慣れたもの。にこにこと話に乗ずるフリをしてあしらっています。うるさいけど穏やかな時間が流れていて、とても良いものを見たなと思いました。
お爺さんの派手さと元気さは、わたしからは程遠いものだけど、程遠い人が共存する世界を見ると平和を感じます。日常的に服用する薬をもらいにきていたみたいだけど、まだまだお迎えは来ないでしょうね。眼福です。

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