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Anarchy in Tokyo

最近、何もかもをかなぐり捨てるような断捨離をしました。
体感的にこれまでの人生で得たものの70%はカットできたような気がします。
※断捨離自体の記事はこちらで、殲滅魔術が記述されている魔導書も紹介しているのでよろしければご覧ください。

断捨離の際、高校・大学時代に着ていた洋服が出てきました。ゴミ捨て場から拾ってきたようなボロボロのジーンズや、お前の体液は毒薬でできてるんかと思うほどドクロがあちこちにプリントされたTシャツ、玉ねぎを切るだけでも誤解されるだろうと思われる飛末血痕チュニック。

全身で殺人現場を表現している衣類です。

うわぁヤバい……こんなものを学生時代のわたしは着ていたんか、と脳裏をよぎる前に「うわぁ」の部分で捨てました。
あの時代のわたしはどうかしていました。宇宙人に捕らえられて脳内にコントロールチップを埋め込まれていたレベルでおかしな服がたくさん出てきました。

思えば、わたしのファッションセンスがおかしな方向を走り始めたのは、アルバイト代で自由気ままにお洋服が買えるようになった高校生の頃からでした。

それまではファッションの「ファ」の字にも興味を抱かぬただのオタクで、お洋服はカーチャンが買ってきたものを適当に着ていました。
女の子だったからさすがに「AIR WALK」は着なかったけど、男の子に生まれついたら服を着る意味すら考えぬまま「AIR WALK」と「bad boy」を着回していたことでしょう。

カーチャンはわたしと趣味・嗜好が180度違う少女趣味です。明菜ちゃんではなく聖子ちゃん派です。
一応の確認を取るために「ファッションセンターしまむら」に連れて行かれるのですが、選ぶ洋服はイチゴ柄・花柄のワンピースやフリルのついたスカートがメイン。
娘に聖子ちゃんコスプレをさせる気満々です。

そんなのヤダよ。動きにくいじゃん、という意思を伝える(が、自らは選ばない)と、わたしを「ファッションセンターしまむら」に連れて行かなくなった代わりに、シンプルな無地のTシャツとシンプルな無地の短パンを買い与えるようになりました。

「よつばと!」という漫画の主人公・よつばちゃん(5歳)と似たような格好です。よつばちゃんに例えると可愛いけれど、「クレヨンしんちゃん」のしんちゃん(5歳)にも通ずる格好です。母ちゃん、とっても動きやすいゾ!
そんなわけで5歳児と変わらないファッションセンスを貫き、十五年の歳月が過ぎました。

さて高校進学です。わたしの通っていた高校は制服ではなく「標準服」という形で制服を採用しており、標準服を着て来てもいいし私服で通学してもいいよ、という何でもありな校風でした。
あまり詳しく書くと、わたしの出身地に近い人は「あの高校かー」と分かってしまうのでぼやかしますが、「自身を律することで生徒の自主性を育む」というのが我が校の教育方針だったようです。

大体の高校生が最初の一年は個性を出そうと、自分なりのカッコイイ・可愛いと思える私服で通学するのですが、そのうち面倒くさくなって標準服を着始めます。

当時流行した「らき☆すた」という日常系アニメの主題歌に「制服はかんたんよ=ラクチン」という歌詞があるのですが、まさしくその通り。

せいふーくはーかんーたーんよーらーくちーん♪

というわけで、徐々に私服組の人数は減り、高校二年も中盤になると私服で通学しているのはヴィジュアル・パンク系かロリータ系かものすごいギャル系かの数パターンに別れました。
要はファッションスタイルに一家言あるタイプです。
(あとたまにお母さんが制服をクリーニングに出しちゃったからって当たり障りのない服を着てくる人)。

ちなみに当時のわたしは通っていた図書館で借りたCDをきっかけにパンク・ロックにどハマりしていました。

ピストルズとかザ・クラッシュとか(ラモーンズは聞かなかったな)。オールドスクールパンクと呼ばれる、70年代イギリスで流行した反社会的な思想を持ちつつ、世界中の売れてる音楽に中指立てるぜ的なバンドグループです。

ざっくり言うと、なんかすごいうるさいやつ。
ライブ中に観客とケンカするやつ。

ちょうど世間では矢沢あい先生の「NANA」が大流行中。わたしも流行に漏れずどハマり(ヤスが大好き)。
さらに当時のわたしの敬愛作家は嶽本野ばら大先生(「ミシン2/カサコ」が大好き)。

なんかもうこれだけ揃えば、パチスロの「777」が並んだと言いますか、たとえ無印良品やユニクロのお洋服が大好きだったとしても、そっちの路線に流れてしまうこと必至。

感化されまくった多感な女子高生のわたしは、とにかくもうパンクな格好がしたくてたまらない。
ドクロがついたトップスと革ジャンとボンテージが着たい。
ラバーソウルも履きたい。安全ピンどこかにつけたい。鎖まきたい。南京錠つけたい。白黒のニーハイ履きたい。ギンガムチェックの巻スカートと、あと赤黒のボーダーシャツと、あと、あと、えっとえっと……と一通りパンクらしいファッションに手を出し、人目も気にせず街中や校内を闊歩。

バイト代を貯めてはヤフーオークションでパンクファッションブランドの洋服を競り落とすことに必死でした。

当時のお気に入りのブランドはSEXY DYNAMITE LONDON、SUPER LOVERS(LOVERS ROCK)、そして奇跡的に競り落とせたVivienne Westwood。HYSTERIC GLAMOURのTシャツを物色するのも大好きでした。競り落とせなかったけど。

パンク・ファッションの老舗ブランドで全身を固めたかったけれど、高校生のアルバイト程度のお金ではまかなえず、「もうパンクっぽかったら何でもいいや」と休日を使っては原宿に繰り出し、Vivienne Westwoodのアーマーリングのバッタモンやオーブネックレスのバッタモンを入手してにこにこ顔で帰ってきました。

ところで、当時はネオ・ヴィジュアル系というV系の新流派も大流行していたの、覚えていますか?

退廃的な世界観を歌やファッションに表現する、ちょっと中性的なお兄さんたちのかっこいいバンド。
※ヴィジュアル系に詳しくないので、まったく説明になっておらずすみません。詳しくないので固有名詞も控えますが、当時の時代を生きた人は何組かのバンド名が思い浮かぶはず。

パンク・ファッションとヴィジュアル系ファッションは色味やデザイン、モチーフにかぶる部分が多く、両音楽に関心のない人からはどのファッションがパンク系なのかヴィジュアル系なのか判断がつきません。

関西風のお好み焼きと広島風のお好み焼きくらい違いがあるのですが、ぱっと見全然分からない。

当時のわたしはパンク音楽の影響もあって、かなり性格が尖っていたので、絶対に、なんとしてでも、ヴィジュアル系ファッションに間違われたくありませんでした。
わたしはヴィジュアル系のファンではないし、わたしをヴィジュアル系ファンに間違えることは、ヴィジュアル系ファンの方々にも失礼だと思っていました。

「蒼りんってV系好きだったんだね〜」などとクラスメイトに言われようものなら「違うよ!これはパンクだよ!わたしはV系とか全然詳しくないよ!」といちいち相手の間違いを訂正していました。

ところが……髪の毛のこめかみあたりに赤色と金色のメッシュを入れ始めたあたりから、ヴィジュアル系が好きで、ファッションもヴィジュアル系やゴシック系です、という高校生たちが集ってきました。
話してみると「ヴィジュアル系好きの仲間かと思った」というのです。

「違うよ!わたしはパンクだよ!違うよ違うよ!」と面倒くさい奴全開の徹底したいつもの訂正をくわえると「そんなことを言ってくれるな。同じ匂いを感じるんだからいいじゃねぇか」とたくさんヴィジュアル系の友達ができました。
違うよ!わたしのはパンクなんだけど……まあいいか。気が合うし。

ということで、高校時代のわたしはパンク街道まっしぐらで、V系のやつらは全員友達、みたいな交友関係を育みました。
V系の友達が言っていたのですが「Vの人は穏やかな性格の人が多い」そうです。車椅子依存症の彼女が〜とか、血でできた薔薇の花を君に捧げる〜とか歌っているのに穏やかなのか……穏やかの定義とは。

ところで、ファッションの力って偉大ですね。
類は友を呼ぶのに最適な方法は、自分と似たファッション・センスの人を見つけることです。

大学に入ると徐々にパンク熱は薄れて、今度はグランジ・ロックにハマり出すのですが、グランジ・ファッションはすごく楽。

適当な長袖(赤黒のボーダー推奨)にぼろぼろのジーンズを履いて「グランジ大好きです!」と宣言すればそれだけでグランジです。主に古着で間に合います。
古着好きでファッションにこだわらなかったカート・コバーンに感謝です。
彼はパジャマでライブステージにも立っているので、夜はパジャマを着ればグランジです。
カーディガンも毛羽立っていれば毛羽立っているほどグランジっぽいので毎冬買い替えなくていいし、変な洗濯の仕方で服がよれよれになってもグランジファッション的には味が出るし、とにかく汚れていればなんでもOK。

グランジはかんたんよ=ラクチン。

という過激な音楽・過激なファッションで駆け抜けた学生時代。

現在の一押しはユニクロです。

ユニクロは便利です。夏は涼しいし冬は温かいし、お値段も安くて最高です。人類の文明の最先端を行くブランドだと思っています。
何よりオタクがオタクくさく見えないところがいい。

もうわたしも良い年齢なので、日常的な意味での「都市迷彩」をまとって落ち着いています。間違っても白黒のニーソックスは死ぬまで履きませんし、長い黒髪もツインテールに結うことはないでしょう。

それでも片付けの黒魔法を使って殱滅した部屋にロック魂の残滓は残っていて、雨の日はラバーソウルを履いて買い物に出かけたりしています。

全身ユニクロで、ラバーソウルは長靴代わりに使っても、ロック魂消滅せず。です。たぶん。

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