髪の毛をバッサリ切られなければいいや、程度のハードルの低さで美容院に通っていました。
「髪の毛伸ばしているので切らないでください。あと適当にお任せします」
注文をつけるときは本当こんな感じ。託していました。
わたしより美容師さんの方が髪型に詳しいし、細かく注文つけて疎まれるとヤダし。
ロングにしたいことは相手に伝えてあるから、どこを切られてもそんな変わらんやろ。
そう思っていました。
結果、前髪が半壊しました。
はじめのうち、あれ? と思っていました。
あれれ〜おかしいぞ〜前髪で眉毛が隠せない。
前髪の長さどのくらいにします? と尋ねられたので、眉毛隠れる程度でおなしゃす、と伝えました。
でも、眉毛が隠れない。
長さは適切なのに、なぜか眉毛が目立つ。
何回も櫛でとかしてストレートにしました。
ハラハラと前髪が左右に流れました。おでこが剥き出しになってる。
なぜ?
最初の一回目は原因が分からず、二回目も分からず(徐々に悪化している)、三回目にお願いしてようやく気づきました。
前髪が簾状態になってる。
「シースルーバンク」というやつらしい。
少し前に「昭和レトロ」という、バブル期のデザインやファッション、タレントが流行しましたよね。
紫とかピンクとかボディコンとか「しもしも〜?」とか、簾前髪とか。
簾前髪とか。
簾前髪とか……。
念のために書いておくと、適当にお任せしたわたしに非があります。
「適当にやってくれ」という逆にプレッシャーになりそうな注文に、美容師のお姉さんは「はぁい」と爽やかに答えてチョキチョキ切ってくれました。
しかし、
正直にいうと、
「シースルーバンク」は嫌だった……。
わたしは平成生まれですが、小さい頃にバブル感が抜けきれず「シースルーバンク」をやっている女性をたまに見かけました。
古いアルバムでピースをする幼児のわたしの傍を、たまたま通行したお姉さんが「シースルバンク」だったりもしました。
バブルは知らないけれど、リアルタイムであの髪型の人と共存した世代です。
若い子が「一周回って新しい!」と感じる感覚がない……。
普通に時代遅れだろ、と思ってしまう……。
前髪カットだけ別の美容室を訪ね、重くしてもらえないかと相談しました。
後ろの毛から髪の毛を持ってきて、前髪を隠してくれないかと。
しかし、ほとんどの毛を前に持ってきて梳かしているご様子……(涙)
そもそも、わたしがロングヘヤーにし始めたのは姫カットにしようと思っていたからで、
姫にするなら前髪もものすごく重くしなければ帳尻が合わない。
一言「姫カットにしてください」と言えば良かった。
プライドが邪魔して言えなかった。
姫って(笑)お前いくつだよ(笑)顔面までは変えられませんけど(笑)と思われるの恥ずかしくて言えなかった……。
その結果、姫ではなくジュリアナになってしまった。
広義の意味において「ジュリアナ」も「姫」かも知れないが、やはり時代感が違う。
余は昭和の姫ではなく、平安や戦国の姫になりたいのだ……。
頭は尼そぎなる児の、目に髮のおほへるを、かきはやらで、うち傾きて、物など見たるも、うつくし。
https://shikinobi.com/makuranosoushi
(おかっぱ頭の子どもが、目に前髪がかかるのをかき上げないで、ちょっと頭をかしげてものを見たりしているしぐさ。)
って清少納言も激推ししている、ああいう前髪にしたいのじゃ。
あれから半年ほど、ひたすら前髪を伸ばしているけれど、美容室に行くのが怖いです。
またひとかけらのプライドが邪魔をして、
「姫にしてください!姫にしてください!姫にしてくださいいいいいっ!」って言えなかったどうしよう。
既に三回くらい「シースルーバンク」にされているし。
「ひひひ、姫……あ何でもないです。今回も適当にお願いします」
って言ったが最後、絶対に「シースルーバンク」にされてしまう。
普通に緊張します。
一瞬の迷いが命取りになる。
居合い切りに似た緊張感ありますね。
ヘアカットだけに。