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ラップバトルをしたら友達が増えた

神宮寺先生「君も男ならラップできるだろう?」

女だけどラップが好きです。

できているか分からないけど、たまにネット上のサイファーでラップバトルをしています。

以前、大好きなラッパーのDaokoさんの記事を書きました。

語彙の選び方やストーリー展開など、細かい部分を緻密に作っていく感じが小説に似ていると思います。
高校生ぐらいのときに「ライムスター」や「soul’d out」「Heartsdales」なんかを聴いて、いつかわたしもラップバトルをやってみたい!と思っていました。
しかし、当時(も)陰キャで臆病だったわたしはサイファーには参加できず、そもそもサイファーがどこで開催されているかも分からず、一人カラオケでひたすらラップを歌いまくり腐った世の中を救ったつもりになっていました。

語呂合わせの歌詞も書いてみたけれど、ただの語呂合わせでしかなく、リズムを整えながら伝えたい思いを込めるのはとても難しいと感じました。

掴んだと思ったらウナギのように手の中をすり抜けていく。そんなところも小説に似ていますね。

わたしは思っていることを口頭で伝えるのが苦手で、喋っているうちに言いたいことを忘れるし、別の話題に興味が移って話が飛んだり、頭の中にある言葉が抜けて何も喋れなくなることがあります。
血の気が多いわりに口論はとても弱い。秒で論破されてしまいます。

そんなわたしにとって、誰かの作った歌詞をあたかも自分の言葉のように口ずさむことのできるラップは、フラストレーションのはけ口にぴったりでした。

ネット上にサイファーがあると友達から教えてもらい、一時期そこに入り浸っていました。
その場所には練習用の一人サイファーができるスペースがあり、なんとなく今の気持ちを即興で歌にしてみると……やっぱり出てきません。
つくづく喋ることには向いていないな、と思います。

ある日、別のサイファーに地方在住の男の子が入ってきて「ちょっとラップしませんか?」と持ちかけられました。
ラップというと互いをディスり合うイメージですが、その場所はディス禁止だったので、お互いの出身地あるあるを言葉に込めてやりとりしました。

♪わたしの地元はヤンキーのおとも
♪中学 思い出 いまだに夢中
♪23区怖ぇここから出られねぇYOYO

みたいなことを歌っていると、相手が爆笑。

♪東京住まい うらやむまい
♪俺の地元は茨城 イバラしかねぇけど
♪俺は好きだぜ 水戸 納豆

みたいな返しがあり、雑談タイム。
「天野さんのおすすめのラッパー誰ですか?」と聞かれて
「ライムスター好きですよ。最近はDiggy-MO’をたくさん聴いてます」と返事をしたら
「渋いっすね!!」と一言。

年齢的に十歳くらい離れた人だったので、わたしが学生当時に流行していたヒップホップユニットは渋いレベル。
そうですよね、ジャパニーズ・ヒップホップの創始者みたいな人たちですよね。「ライムスター」とか。
お返しにナウいラッパーをいくつか教えてもらい、ラップバトルは終了。

それから定期的に、自作のラップソングが送られてくるようになりました。
その人は作った歌をYOUTUBEに上げて自己表現をしているらしい。
どの曲も勢いがあって、刹那的でカッコいい。

しかし、なんだこの謎の繋がりは……
ラップって世代も地域も超えて繋がるんだなーすごい、と感じた瞬間でした。

ちなみに、ラッパーにはそれぞれ決め台詞みたいなのがあって、

♪わたし 天野 a.k.a あお インダビルディング〜
(実際はもっと色々盛り込んでいる)

みたいな自己紹介を隙あらばリズムに載せてしめくくる手法があったりします。
いろんな人のサイファーを聞いてると、そこだけ急に歯切れ良くなったりして面白い。

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見える都市

今、コーヒーを飲んでいるカフェは百貨店の8Fにあり、JR駅を出たり入ったりする人の流れが見渡せます。夜も更けて、チェーン店の強い蛍光灯がきらきら。

複雑に交差した道路で、誰かが何かをやらかしたらしく、パトカーがサイレンを点滅させて左折しました。

ここはたまに使うお気に入りのお店で、素晴らしい見晴らしが素敵。わたしが草薙素子だったら、クールになんかつぶやいて飛び降りています。

高いところから見える人の流れって良いですよね。歩いている一人をピックアップして、その人の行動を追うと、延々暇潰しができてしまいます。

機械的な電車の往来も好きです。高層ビルが角ばっているところも。

俯瞰風景を記した絵も好きです。吉田修一さんの「パークライフ」という小説にイラストレーターの寄藤文平さんが描いた絵があまりにも素敵で、三回くらい読み返しました。ハードカバーの表紙の方です。

ちなみに表紙と小説の中身はあまり関係なさそう(あるいは、代々木周辺の模写なのかな?)。

人と乗り物と建物がちょうどよく不自然なバランスで関わり合っていると「都市」を感じます。「都市」という言葉って、四角四面だけど未来感があってカッコいいですよね。すべてを箱詰めして、早送りした時間のコンベヤーに乗せてくれる「都市」。建物を縫うように歩く人たちは、様々な感情を抱いているだろうけど、みんな一緒くたに、機能の一つになっています。

個々人の感情を受け取る必要がないし、街をゆく個々人にどんな個性が宿っていようと現在は「都市」の一部です。

そういうところがとても好きです。

大好きなイタロ・カルヴィーノの小説「見えない都市」に、変なシステム(概念?)で動く街がたくさん出てきます。水道水のパイプでできた都市とか、記号標識がたくさんある都市とか。

人も出てくるっちゃ出てくるのですが、語部の費やす説明はもっぱら都市に注がれていて、まるで都市そのものが意思を持った生き物みたいです。

生きていない生き物を解剖しているように見える「見えない都市」。

おすすめの本です。

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