「フィアスくん」
助手席で、真一が言う。
「俺の話を聞いてくれないか、フィアスくん?」
「その呼び方を止めるんならな」
フィアスはフロントミラーでコンの様子を伺う。後部座席の彼女は身じろぐことなく、十分前から同じ姿勢を保ち続けている。光の宿らない視線はフロントガラスを貫いて、無人の道路を見つめたままだ。見れば見るほど、人の皮を被った機械だと思えてくる。
 真一も後部を振り返り、苦虫を噛み潰した顔で向き直った。
「それで、話とは?」
「フィアスのガード対象から外れたい」
はあ、とフィアスは溜息とも肯定こうていともつかない言葉を発する。
 また幼稚な考えを思いついたか、と助手席を見やると、意外にも真一の顔は真剣だった。確固たる決意を秘めた眼差しだ。今回はいつもより面倒くさそうだなと思う。とりあえず理由を聞いてみる。
 簡単だよ、と真一は言った。
「お前と対等になりたいからだ」
 放った言葉が本心からか自身に確認するように「うん」と真一は頷いた。
 対等か、とフィアスも真一の言葉を繰り返す。
 対等とは、また抽象的な概念を持ち出してくる。抽象的、というより個人的か。何をもって「対等」と見なすかは個々による。
 それでも真一の性格や価値観を知る今となっては、そのキーワード一つで言いたいことの大半は察知できた。
 つまりこういうことか、と暇つぶしの答え合わせにフィアスは口を開く。
「マイチは俺のガード対象から外れることで、対象者を守るために隠している情報や制限から自由になりたい。くだいて言えば、俺の保護者面ほごしゃづらと、お前の子供扱いはやめろと言いたいわけだな?」
「すげぇ! そこまで分かってくれちゃってる?」
真面目くさった顔から一転して、嬉しそうに笑う真一。理解することと、許可することは別物なのに、既に許可が下りたものと早合点はやがてんして喜んでいる。
「フォックスと戦っている時から思っていたことなんだ。俺が護衛対象から外れれば、お前も余計な血を流さずに済む」
「本気で言っているのか?」
「俺はいつでも本気だよ! 今だって覚悟を決めてこの車に乗ってる!」
 本気と覚悟を示すためか、真一は一際ひときわ大声で叫ぶ。
 うるさいな。そんな大声で叫ばなくてもただでさえお前の声はでかいんだぞ、と思いながら、フィアスは真一がその結論に至った経緯を推測する……いや、推測する間でもない。
 真一はフォックスとの戦いでアジトに置き去りにされたことを恨んでいる。さらに自分が日本語以外の言語を使って、フィオリーナやシドとやりとりしたことを未だに根に持っている。真一の側からすると、組織の三人が、子供そっちのけで難しい話をする大人たちに見えたのだろう。
 あれから様々な事件が起こってすっかり忘れていたが、真一だけは心に引っ掛かりを残していて、ずっとこの話をするすきを伺っていたようだ。
 意外と執念深いな……フィアスはため息を吐く。
「あれは確かに良いやり方じゃなかった。それは認める。気に食わなかったのなら謝る」
「それじゃあ……」
「ガード対象からは外さない」
 なんでだよ! と憤慨ふんがいする真一。今まで順調に進んでいた話が、ここへきて逆転してしまったのだからその怒りもひとしおだ。
 なんでだよ! と問われれば、弱いからだと答えるしかないが、その答えを言ったところで真一の気が鎮まるとは思えない。
 まったく次から次へと問題が発生する。それも、頭脳で解決できない類の問題だ。
 真一の主張は善意から来ている。友達を助けたいという、極道仕込みの義理人情からだ。俺を助けたいのなら、素直に言うことを聞いてくれ、と喉元まで出掛かった言葉をフィアスは飲み込む。こちらの主張をかかげても意味がない。
 分かった、とフィアスは言った。
「ガード対象から外れて良い。情報も――ほとんど行き渡っていると思うが――共有する。ただし、護衛はする。これは絶対条件だ」
「やっぱりそこは譲れないわけ?」
「逆に聞くが、どうして護衛を外したがる? 自分が足手まといだと思うからか?」
 うっ、と真一は言葉に詰まる。図星を突かれて動かなくなった友人を見て、なるほど、とフィアスは思う。
 人間が面倒くさいと感じると同時に、興味深いと感じるのはこんなときだ。特に真一に関しては論理的な説得が一切通用しない。彼を納得させるには、こちらが同じ価値観の土俵どひょうのぼり、義理人情というやつに対応する必要がある。
 良い方法がある、とフィアスは提案する。
「足手まといだと思わなければ良い。お前のよく使う言葉で表現すると……〝ダチだから助ける〟か。俺はただ、ダチだから助けてる」
「おお、少し納得出来たかも……」
「単純なやつだな。まあ、気持ちの落とし所が見つかったなら良い」
「いやいや、俺はお前と対等になりたいんだけど!」
「それなら、ダチとして助けてくれ。俺が窮地きゅうちおちいったときには。これで対等だろ」
なるほど! 分かったよ! と真一は上機嫌に笑う。
 言い方を変えただけでここまで納得されるとは。
 単純にも程があるな、とフィアスは思うが口には出さない。カーナビに記された目的地――埠頭ふとうは目前だ。

 埠頭近くの駐車場に車を停車させると、いち早くコンがドアを開けた。両手に銃を抱えて、スタスタと戦場へ歩き出そうとする。こちらの都合にはお構いなしだ。
 ストップを掛けると微かな鈴の音でコンの動きが止まった。薄々勘づいていたことだが、彼女を操る合図は、電子音にくるまった鈴の音であるらしい。もう一人の狙撃手が操作しているのだろうか。この奇妙なコンビは一体何者なんだ。ロボットの狙撃手といいドイツにいる遺伝子研究者といい、フィオリーナのコネクションは謎だらけだ。
 コンは自身の瞳の色と同じく、生気のない灰色のオーラをまとって静かに佇んでいる。
 フィアスは五感を開く・・・・・。コンは気配を殺すどころか、喪失している。まさにシステマティックなロボット。命令次第で自我のない物体と化す彼女の非人間性がありがたい。
 殺し屋といえども若い女性を、従順なグレイハウンド犬に見立てて命令を下すには抵抗がある。
 おい、と背後に声を掛ける。
 真一は真剣な眼差しで、手にした銃を見下ろしていた。頭の中で不穏なシミュレーションをしているようだ。黒い目が、与えられた銃と同化するほど黒く染まっている。
 もう一度声を掛けて、真一はようやく我に帰った。
「絶対に間違えるな」フィアスは厳しい口調で言った。
「そいつは護身用だ」
 分かってると言うように、真一は重々しく頷いた。
 フィアスは車のトランクを開けて、使用武器を選別する。アジトから運搬した銃器は、ハンドガンからロングガンまで一通りの種類が揃っている。ここはコンと同じようにアサルト・ライフルを使うべきか? この日本でオーバースペック過ぎないか? しかし、前回倒した赤目はフルオートのライフル銃を撃ちまくっていた。
 彼らに対抗するならこちらもそれなりの武装をしなくてはならない、の、だ、が……。
「どうしたんだよ?」と真一が聞いてくる。早く行こうぜ、と急く声を聞き流してフィアスは言った。
「個人的な話をして良いか?」
「なんだよ?」
「ライフルとハンドガンでは使用弾薬の大きさや飛距離、その威力に雲泥うんでいの差がある。俺は米国系のライフルもソ連系のライフルも一通り扱えるし、紛争地での傭兵ようへい経験も一応ある。戦地の兵士のメインアームはライフル銃で、ハンドガンがほとんど役に立たないことも知っている」
 うーん? とに落ちない顔で真一が首を傾げる。話の内容も方向性も予測がついていないようだ。
 つまり何が言いたいわけ? と問われる前にフィアスは答えた。
「好きじゃないんだよ、ライフルが。大口径のフルオートでとにかく撃ちまくれば当たるような単純さと、取り回しの不便さが好きになれない。何よりもうるさい。傭兵で雇われたアフリカのどんちゃん騒ぎには、ほとほとうんざりさせられた。警察官時代にもテロ事件を起こすやつはライフル銃を振り回して、下品な銃声をとどろかせていた。俺はそういう、いかにも戦いです、というような主義主張のうるさいものが好きじゃない」
「うわ、マジで個人的な話だな。ただの好き嫌いの話じゃん」
そうだ。個人的な嗜好の問題だ、と言いながら、フィアスは武器庫から調達したMP5Kを取り上げる。
「サブ・マシンガンはまだ愛着がある。9mm弾は汎用性はんようせいが高いからな。場違いを承知の上で、今回はこれで行かせてもらいたい」
 はあ、と真一は今までの説明をまったく理解していない様子で曖昧に頷く。
 いいんじゃね? と投げやりに答える言葉の裏には、ガンマニアの美学なんて知らねーよ、というニュアンスが込められている。その気持ちはよく分かる。真一が嬉々として古着の話をするたび、適当な相槌あいずちを打ちながら、古着マニアの美学なんて知らねーよ、とフィアスも思っている。
 とにかくお前の護衛はするから安心しろ、と付け加え、コンに合図を送った。
 歩き出したコンの後に続いて歩を進める。
 横並びに歩きながら真一は言った。
「フィアスって変わってるよな。前から思っていたんだけど、常識人のフリをして、本当はかなりの変態だろ?」
「マイチも古着に関しては一家言いっかげん持っているだろ。変わり者はお互い様だ」
「古着好きはたくさんいるもん。普通だよ。青いジャケットと黒いジャケット、どっちにしようかなーって悩む人間はたくさんいるけど、ライフル銃とマシンガン、どっちにしようかなーって悩む人間は、横浜ではフィアスくらいだよ」
「お前もライフル銃に劣らずうるさいな……」
話しをしながら、埠頭に目を向ける。点在したコンテナやトレーラーから、早くも殺気が漏れ出している。血の気の多い獣たちは、湧き上がる興奮を隠すつもりもないようだ。感じ取れるだけでも五人から六人ほど。その気配はおそらく戦場の最前線にいる者たちだろうから、実際には二倍以上の敵が潜んでいるに違いない。
 それはそれとして、とフィアスは考える。
 もう一つの気配は誰のものだろう。
 車のドアを開けた時、煙のように忍び込んできた。誰かに見られているという感覚。
 それはゆるやかに周辺を漂いながら、こちらの状況を嗅ぎ回っている。
 そこには殺意や悪意という、馴染みのある重さは感じ取れない。「嗅ぎ回っている」というより「観測している」と表現した方が的確かもしれない。
 フィアスは真一と会話を続けながら、視線だけを周囲に走らせて、気配の出どころを探った。すると、漂っていた誰かの視線はたちどころに消失してしまい、逆探知ができなくなってしまった。
 正体不明の観測者は、探りを入れられることを好んでいないらしい。敵じゃないと言い切れないが、不意打ちを狙っているわけでもなさそうなので捨て置くことにする。正体不明と思いつつ、あらかたの予測が立っている。
 然るべきタイミングが来れば、誰何すいかに応じるだろう。
 フィアスは告げた。
「コン、こちらの準備はOKだ」
 前方のコンが走り出した。その背を追って、二人も走り出す。
 コンテナ迷路へ滑り込むと、右方向から急速に近づく敵の気配がした。フィアスは立ち止まり、後方の真一を制する。
 一方コンは猛然もうぜんと直進し続け、道と道がぶつかる中心、十字に区切られた死角の切れ目に躊躇ためらいなく飛び込んだ。ラバーブーツが地面を蹴り上げ、細い身体が宙を舞う。
 横道へと放たれた閃光、連続射撃の音。
 再び死角へ滑り込んだコンは、受け身を取らず地面に転がる。構えたライフルの銃口は四角く区切られた空へ向けられている。再び射撃音。
 撃ち落とされたのは、鳥ではなく人間だった。コンテナから落下する人間の衝撃で微かな砂塵さじんが舞う。
 もう一人――彼女が最初に狙撃した獲物と逆方向から突進してくる敵の気配。
 一拍の間を置いて姿を現した男の銃口はコンに向いていた。
 フィアスは瞬時に狙いを定め、後頭部から背中へと舐めるように9mm弾を撃ち込む。
「来い!」
真一の腕を強く引く。右に曲がり、撃ち倒された死体を飛び越える。
 前方。その文字が脳裏をよぎると同時に、先ほどまで進行していた通路に弾丸の群れが通過した。
 銃を構えたまま、壁に背を預ける。辺りを見回す。死角へ逃げ込んだ真一の姿が消えた……と思いきや、地面に倒れていた。
 道沿いの死体に足をすくわれたらしい。
 ううっ、と呻きながら立ち上がると、フィアスの隣に立ち、同じように壁に背を預ける。
「痛ってぇ……顔面からいっちまった」
「悲惨だな。大丈夫か?」
「俺がつまずいたヤツよりは悲惨じゃないし、大丈夫だよ……」
涙目の真一がぐずっと鼻をすする。すぐさま顔をしかめると、地面にぺっと血を吐き出した。
 ごしごしとリストバンドで鼻血をぬぐう真一の隣で、フィアスはうつ伏せの死体を蹴る。死んだのは二十歳前後の少年だった。見開いた赤い目は、光を失い虚空を見上げる。隣でうつ伏せている少女の目もきっと赤いことだろう。自分が撃ち倒した小柄な少年もまた然り。
 つんざくような弾丸の雨は止んだ。しかし、殺人マシーンを見失った。フィアスは耳を澄ます。すると、電子の鈴の音が聞こえた。
 自分たちが逃げ込んだ脇道の終点から聞こえてくる。真一の腕を掴んでコンテナの端へと引っ張っていく。
 身をかがめると、フィアスは背後の追従者ついじゅうしゃを手で制した。
「ステイだ、マイチ」
「わん! って答えれば良いのか?」
「好きにしろ」
 鉄板を踏みしめるブーツの音が聞こえる。コンテナの終点は再び十字に伸びる縦の通路にぶつかる。敵の気配がしないのを確認し、一気に駆け抜ける。向かいのコンテナにたどり着くと、踵を返して真一の隠れているコンテナを見上げる。
 やはり上か。赤い目が対角線上にいる自分を捉えた。
 天空から、舐めるような弾丸が足元のコンクリートを穿つ……が、二、三発の小雨で止んだ。
 コンテナ上の少年がうつ伏せに倒れ、入れ替わりにコンが現れた。倒れた獲物に向けて一発。完全に息の根を止めた後で、するりと地面に降り立つ。
 突如上空から現れたコンに、うわわわっ、と真一が悲鳴をあげて慌てふためく姿が見える。
「コン、マイチを守れ」
 チリン……鈴の音が聞こえたのは、了解の合図だ。フィアスは今いるコンテナの終点へ突き進み、垂直方向から迫りくる敵を待ち伏せて迎撃げいげきした。胸に二発、額に一発。失速した敵の末路を見ることもなく、二人のいる場所へ戻る。
 再び、鈴の音。
 コンがフィアスに向けて銃を構える。即座に放たれた銃弾は傍を掠め、背後にいた敵に当たった。
 危機一髪。気配が混ざって、もう一人の存在を見逃していた。
「ありがとう。助かった」
 意思も感情もないと分かりつつ、一応の礼を言う。意思も感情も持ち合わせている人間のさがだ。
 真一を見ると、こめかみに冷や汗を浮かべながらニヤリと笑った。その表情を翻訳すると、こういうことだろうか――まだやれるぜ。
 コンは意思のない目で、埠頭の中央へ視線を向けた。
 肩の高さまで右手が上がり、ハンドサインと手話の合いの子といった、独特なボディランゲージを描き出す。上空からの映像を見ると、中心部は開けた丸い空間になっている。碁盤状ごばんじょうの細道をうろつきながら、敵を一人ずつ殺していくより、わざと狙われやすい中心部へ躍り出て返り討ちにする……五本の指は迎撃戦をお望みのようだ。
 目を細めてなんとかハンドサインを読み取ろうとする真一の隣で、フィアスは腕を組んだ。
無謀むぼうだ。こっちには護衛対象がいる」
「それって俺のこと?」
 他に誰がいるんだ、と心の中で返事をするが口にするだけ時間の無駄だ。
 コンの右手が丸印を作る。それから素早くつづる無意識の意思表示――問題ない。私に任せな。
 待て、と声を掛けるより先に、コンは走り出す。
 あるエリアを超えると、四方から銃声がけたたましい鳥のさえずりのように聞こえ始めた。埠頭全体に散らばっていた敵たちが中心部へ集まってくる。
 これだけの人数を一度に相手できるのか? 彼女に意思はないのだろうが、正気の沙汰とは思えない。
 フィアスと真一は、敵に察知されない程度に距離を保ちつつ前進し、中心部から二列手前のコンテナまで移動した。視界に入る障害物はあれど、中心部まで見通せるベストポジション。物陰から伺うと、コンが次々と敵を撃ち倒しているのが見えた。
 銃弾を放っては障害物へ隠れ、再び現れては銃弾を放つ。
 中心付近のコンテナを盾にしているのだが、その場所は常に一定ではなく、いつの間に移動したかと目を疑うほど、現れる場所が次々と変わる。敵も神出鬼没しんしゅつきぼつのコンに翻弄されるがまま、気づいた時には額を貫く弾丸の餌食になっている。
 四人目が倒れたところで、フィアスは前方を伺うのをやめた。
 懐から「JUNK&LACK」を取り出すと、銃を携えていない方の手で器用に火をつけ、煙草を吸い始めた。
 援護射撃えんごしゃげきの必要性を感じない。一人、また一人と敵の気配が消失してゆく。
 真一は足元にしゃがみ込んでいた。先程までの自分と同じく物陰から顔を出して、未だに彼女の軽業に圧倒されていると見える。
 フィアスはスカジャンの襟首えりくびを掴むと、好奇心旺盛な友人を観客席から引っ張り上げた。
「殺しの現場なんて見るな」
「あ、また保護者面してる!」
「友としての忠告だ。殺される側の一人として夢に見たいなら止めはしない」
 過去の体験談は十分な説得力を持つ。渋い顔で、真一は忠告に従った。
 断末魔が上がらないのは賞賛に値する、とフィアスは思った。
 自分が死んだと気づく間もなく死なせてやるのは、簡単なようで難しい。近距離戦であればなおさらだ。
 銃口を向けられた時、人は死を意識する。その瞬間の恐怖は、電流に触れるように、銃を向けるこちらにも伝わってくる。
 感情は空気を媒介に伝染するのだ。
 しかし、彼女の戦い方は違う。どんどん濃くなる血の臭いを抜きにすれば、恐怖が根源の、しびれる緊張感が伝わってこない。
 今のところ、コンが手に掛けた若者の中で、最期の瞬間を自覚した人間はいなさそうだ。
 彼女の実力は示された。その強さは、フィオリーナに勝るとも劣らない。
 フィアスはくわえ煙草のまま、音のない拍手をした。