喫煙車両

喫煙車両

外勤を、ほぼマイカーで済ましてしまうのはどうであろうか。
車型はセダンだし、色も濃紺だから捜査車両と殆ど変わらないのだが、それでも何だかマズイ気がする。
マグネットのついたパトランプは助手席の足元に置いてあるが、それでもマズイ気がする。
当たり前だが、自家用車に無線はついていない。
それ故、外勤時の連絡は全てこの携帯電話に委ねられている。それが、不安の最大のファクターなのではないか。
緊急時の無線が届かない、マイカー。


このことが公になったら、しょっぴかれるな、と思う。職務怠慢やら業務上の過失やらで、絶対にしょっぴかれる、と思う。場合によっては、まさかの最悪のケースでは、辞職に追いやられるかもしれない。(最近の公務員は少しのミスでもこぞって辞職する)
そうなったら、たった一本の白い棒に自分の人生は狂わされた、ということになる。
それはそれで、誉れ高いことのように思ってしまうところが、もう既に人生を狂わされているのかもしれない。

「捜査車両は煙草臭くできないもんなぁ……」


そんなわけで、
河野薫のセダンは常に霧が渦巻いているのであった。